委嘱作品

ミュゼ・ダール吹奏楽団は、これまでに様々な方々との共演・交流を行ってきました。数々の個性溢れる委嘱作品も、その実績と記録の一つとなっています。

作曲作品

Lei rise per la prima volta in quel momento(そのとき彼女は初めて笑った) / 長生淳

初演

2017年7月1日
杉並公会堂 大ホール(第20回定期演奏会

指揮

長生淳(自作自演)

交響曲第2番 / 長生淳

初演

2017年7月1日
杉並公会堂 大ホール(第20回定期演奏会

指揮

長生淳(自作自演)

Beyond the lonely quest / 長生淳

初演

2017年2月26日
瑞穂ビューパーク・スカイホール(東京都一般吹奏楽連盟主催 第25回アンサンブル演奏会)

編成

金管打楽器八重奏

楽曲解説

ミュゼ・ダール吹奏楽団の委嘱により2015年に作曲。ご依頼に際していただいたイメージは、旅・冒険譚、ただし物語すべて終えての大団円ではなく、ひとつ成し遂げつつここからさらに旅は続く……といったものでしたが、それにしてももう少し英雄的だったりしてもよいのでは、と我ながらやや驚きつつ、これはやはり好きなRPGの音楽の影響が大きいのだろうと納得しています。具体名を出したりすると話が止まらなくなるので控えますけれど。と同時に、わたしにとっての英雄(の音楽)として一番刷り込まれているのは、ベートーベンの交響曲でもシュトラウスの交響詩でもなく、ジークフリートなんだなあ、と。曲名は出来上がったあとに、演奏するみなさんとも相談してつけたもの。寂寥とした、孤独な旅路の果てにみながひとつになって進む道が待っている……そんな風景です。

忘れがたみの丘 / 長生淳

初演

2016年11月13日
かめありリリオホール(第40回東京都職場・一般吹奏楽連盟 アンサンブルコンテスト)

編成

管楽八重奏

楽曲解説

ミュゼ・ダール吹奏楽団の委嘱により2015年に作曲。この曲のご依頼にあたっては、『スコーグスシュルコゴーデン』―スウェーデンの首都ストックホルム郊外にある「森の墓地」と呼ばれる共同墓地―というテーマをいただきました。そこから哀切・痛切といった感情を基調にして、さまざまな思いが入り乱れる中に、あたたかな気持ちもじわっと広がる、そんな構想を得ました。
『忘れがたみの丘』は、忘れがたい、想い出のよすがとなる丘でもあり、また「忘れがたみ」がしばしば故人の遺児といった意でも使われることから、残された新しい命というイメージも重ねています。
とはいっても具体的に物語や人物を設定しているわけではありませんし、そこに希望を託すというほどの強いものにもなりませんでした。ただ、思い出がはるか遠くにまでさかのぼるようでありつつ、時にまざまざと目の前に立ち上って、それが身を苛むばかりでなく前を向かせ背中を押ししてくれる力ももつ……そんな多層的な時間を感じていただけたらと願っております。

ラピスラズリ ~フェルメールへの憧憬~ / 大村一弘

初演

2010年11月3日
かめありリリオホール(第34回東京都職場・一般吹奏楽連盟 アンサンブルコンテスト)

編成

フルート七重奏

「魂の絃」 三味線と吹奏楽のための協奏曲 / 江原大介

初演

2010年5月29日
ルネこだいら 大ホール(第13回定期演奏会

三味線独奏

野澤徹也

指揮

野上博幸(当団常任指揮者)

楽曲解説

打弦、一つ一つの音は儚い持続ではあるが、それらは断続的に打ち鳴らされることにより、結果として大きなエネルギーとなる。簡潔に言うと三味線に対するイメージはそのように思う。この楽器が息の楽器である管楽器群に対峙して、しかも協奏曲というスタイルの音楽で奏でるということはあまり例はないだろう。
しかし短絡的に日本の文化を取り入れるというだけでなく、そこで新たな音楽を求め今回の作品のコンセプトは「和」と「異」とした。
打楽器の使い方や邦楽器特有の響きを求め、曲の中では木管により笙の響きを再現している。コントラバスをギターのように掻き鳴らす奏法を多用したり、金管楽器による息音による風音の表現、打楽器の出すノイズを日本に多く生息する虫の鳴き声(鈴虫等、不特定)を擬似表現しようと試みた。
音楽は時が経つにつれ、やがて大きな力を纏う。多くの音を浴びた絃には魂が宿り、そこから放たれるのは音楽という名の新たな生命かもしれない。

まず、この編成は実験的であり、そこで何が出来るかを考えることは困難なことであったが、それ故に何が出来るかと何を書くべきかを考え、結果として自由に書いてみることにしました。
そして今回、文化を担い新たな芸術を生み出すということで意義のある、このような好奇心のある編成での作品を生み出すにあたっての尽力者である三味線独奏の野澤徹也氏、委嘱して頂いたミュゼ・ダール吹奏楽団に感謝致します。

「七笛の共鳴」 7人のフルート奏者のための / 江原大介

初演

2009年11月8日
かめありリリオホール(第33回東京都職場・一般吹奏楽連盟 アンサンブルコンテスト)

編成

フルート七重奏

楽曲解説

この楽曲は、7人のフルート奏者のための作品で、奏者はステージ上でV字型に配置されます。
編成は左右前方にピッコロ2人、その左右後方2列にフルート4人、そして中央最後方にアルトフルートが1人となります。

空間を意識した曲で、左右前後に音響が飛び交うように特殊な配置と作曲上の仕掛けを施しています。中央のアルトフルートはその響きを貫く、あるいは共に混ざり合うような役目をします。各楽器が形を成し、共鳴し合い、そしてフルートの音色により浮遊感と立体的音響を試みています。
やがて7つの楽器がそれぞれ一体となる時に、それは一つの大きなエネルギーとなります。

作曲者からのコメント

七笛(ななぶえ)の共鳴はアンサンブルコンテスト用に書かれた自身初の記念碑的な作品です。
まず、難しくても構わないということなのでやりたい放題書かせて頂きました。
いわゆる吹奏楽というジャンル仕様な音楽作りを極力排し、自らの信念の元に作曲しましたので、一般聴衆受けするかは考えの中にはありませんでした。純粋にアンサンブルという枠組みでどれだけ面白いことが出来るかを追求した結果、この作品が生まれることになりました。
編成を聞いた時からそれほど時間はかからずにこの曲の構想を思い浮かびました。お世話になっているミュゼ・ダール吹奏楽団のメンバーからの委嘱なので、作曲のイメージやアイディアが浮かびやすかったのです。
そして完成したこの曲ですが、やはり演奏は難しいです。。
しかし、ミュゼ・ダール吹奏楽団フルートメンバーの好奇心と魂を持ってすれば、この厄介な音楽も上手く飼いならすことが出来るでしょう!
ミュゼ・ダール吹奏楽団フルートメンバーの皆様に感謝致します。

EXULTATION / フィリップ・スパーク

初演

2009年6月6日
杉並公会堂 大ホール(創団10周年記念 第12回定期演奏会

指揮

野上博幸(当団常任指揮者)

楽曲解説(原文)

Exultation was commissioned by the Japanese concert band, Musee d’Art Harmonie to celebrate their 10th Anniversary in 2009. The first performance was given on June 6th in their anniversary year.
The piece is a short and energetic concert opener which is almost palindromic in form and begins in fanfare style, juxtaposing 3/4 and 6/8 rhythms in almost Latin style. This introduces the main theme on euphonium, horns and saxophones which has a ‘blues’ tinge and is underpinned by alternating 3/4 and 6/8 rhythms. After a short bridge passage, a second theme appears which is short and spiky and played by the bass instruments of the band. This is taken up by the whole ensemble and leads to a central more lyrical theme, appearing first on trumpet and then on woodwinds. The staccato second theme reappears which leads back to the ‘blues’ melody which reintroduces the opening fanfare to bring the work to a close.

楽曲解説(意訳)

『Exultation』は、ミュゼ・ダール吹奏楽団の創団10周年を記念して委嘱され、2009年6月6日に初演されました。
この曲は、ファンファーレで始まる短くエネルギッシュなオープニング曲で、逆行カノンを用い、ラテン調の3/4拍子と6/8拍子のリズムが混在して現れます。導入部では、ユーフォニアムやホルン、サキソフォンによってブルース調の色彩感溢れるテーマが3/4拍子と6/8拍子のリズムの中で奏でられます。その後、低音楽器による短くて鋭い第2テーマが現れ、次第にバンド全体に引き継がれると、トランペット、さらに木管楽器による叙情的なテーマへと繋がっていきます。スタッカートの第2テーマが現れブルース調のメロディーが再現されると、オープニングのファンファーレが再び鳴り響く中、華やかに幕を閉じます。

浅葱の空 ~吹奏楽による憧憬的音詩~ / 中橋愛生

初演

2007年5月19日
杉並公会堂 大ホール(第10回定期演奏会

指揮

野上博幸(当団常任指揮者)

楽曲解説(抜粋)

杉みき子の短編集「小さな町の風景」の中に「あの坂をのぼれば」という話がある。幾度となく登っては下る坂道を、海へと目指して歩き続ける少年。執拗に繰り返される道程のうちに、様々な思いが去来し、ついにはくじけそうにもなる。だが、あるとき聞こえた海鳥の声により、少年は坂の上の空が海へと続く浅葱色となっていることに気付く。
言うまでもなく、この話における「海」とは必ずしも本物の「海」であることが重要なのではない。誰しもがそれぞれの「海」を持っており、そこへ向かって歩み続ける。変わらぬように見える風景でも、確実に「海」は近づいているのだ。
曲は一種のパッサカリア。杉の短編で繰り返される特徴的な「あの坂をのぼれば海が見える」という言葉と同じく、6回繰り返される主題。その上に雲とも言うべき音響層が被さっていくうちに、様々な断片が鳴らされる。坂の頂点に連なる空。頂からの眼下にあるのは海ではなく、更なる道程。だが、繰り返されるうちにやがて空は拓き、明るい響きへと徐々に変質していく。ついに海へと達したとき、「海」は常に自らの内にこそあったのだということに、少年は気付くだろう。

NAPPの作曲ノオトより抜粋

《La Decouverte du Feu》 ―ユーフォニアムと吹奏楽のための / 中橋愛生

初演

2005年5月7日
西新井文化ホール「ギャラクシティ」(第8回定期演奏会

ユーフォニアム独奏

外囿祥一郎

指揮

野上博幸(当団常任指揮者)

楽曲解説(抜粋)

ミュゼ・ダール吹奏楽団の委嘱により書かれたユーフォニアムと吹奏楽のための協奏的作品。この曲は「マグリットの三枚の絵」と題した三連作の一曲目(協奏曲の第一楽章)として構想されている。
フランスの超現実主義の画家であるルネ・マグリット(1898~1967)には、ユーフォニアムを題材にした絵が幾つかある。一般的にはテューバと言われているが、様々な絵における大きさを見てみると、(シュールレアリスムでは遠近法や物体の大小が無視されることも多いとは言え)ユーフォニアムとしても差し支えないだろう。「火の発見」と訳されるこの曲のタイトルとなった絵もその一つである。本来は燃えるはずのないものが燃えている、という情景。この絵の背景にあるのは、プリミティブなものなのだろう。
独奏ユーフォニアムはバンドの火の中に存在する。火は既に存在したものなのか、それとも自身から発せられたものなのか。火は自己か、それとも他か。
曲は独奏ユーフォニアムの旋律より発生した音響(火、である)が拡大されていき、やがて独奏ユーフォニアムと対峙、あるいは同化、吸収する、というもの。優れた独奏者は、演奏を聴いているとその背景に一種の幻覚ようなものが見えることがある。どちらかと言えば小柄な外囿祥一郎氏が、ひとたび楽器を手にすれば大巨人のように見える、というのはその顕著な例だろう。ある時、とある吹奏楽伴奏の協奏曲を氏が演奏しているのを聴いたとき、そこに見えたのは、まさに炎を背にした鬼神であった。
マグリットの絵のタイトルは、「火の発見」であって「炎の発見」とは訳されない。つまり、これは「人間」(動物ではなく)の発生を後ろに背負っているとも言えよう。また、マグリットにとって火とは「死」のメタファーであったことはよく知られている。私のこの作品では「F」か「H(またはB♭)」を中心として展開する。「F」は「fire」の象徴であり、「H(またはB♭)」は「Si」、つまり「死」の象徴である。

NAPPの作曲ノオトより抜粋

編曲作品

科戸の鵲巣 ―吹奏楽のための祝典序曲 <コンクール・エディション> / 中橋愛生

初演

2006年8月5日
西新井文化ホール「ギャラクシティ」(第46回 東京都 職場・一般吹奏楽コンクール)

指揮

野上博幸(当団常任指揮者)

楽曲解説(抜粋)

2004年、防衛庁設立五十周年記念として陸上自衛隊中央音楽隊の委嘱により初演された楽曲の編曲版。ミュゼ・ダール吹奏楽団の依頼により、吹奏楽コンクールの自由曲として演奏できるよう作曲者自身によって作成された。
「科戸の風」(しなとのかぜ)という言葉がある。これは「一切の穢れを吹き去ってくれる風」のこと(「日本書紀」での風の神である「級長戸辺命」(しなとべのみこと)が由来)。「科戸」は「し」が「風」、「な」が助詞の「の」、「と」が「場所」なので、「風の起こる場所」の意。また、「鵲巣(じゃくそう)は風の起こる所を知る」という諺があり、カササギがその年の風の具合を予見して巣を作る本能があると言われていることから「未来を予知する能力」の例えを意味しているそうだ。この二つの言葉を合成し、祝福された未来へ向かう序曲とした。また、この二つの言葉に共通項の「風の起こる場所」というのが吹奏楽団を連想させるのもひっかけてある。
「過去と現在」、あるいは「現在と未来」というような「異なった時空」を様々な手法で併置させており、滲むような「時のラスタースクロール」を感じられるように作曲した。要所要所で聞かれるグリッサンドを伴ったクラリネットの鋭い響きはカササギの鳴き声(あまり美しい声ではないのだ)の模倣である。
楽譜は、「全曲版」「コンクール・エディション」の二種類の楽譜がブレーンよりレンタルされており、2つの版の違い、および2006年の全日本吹奏楽コンクールで演奏されたカットについて、本来は含まれていないハープとピアノの楽譜について、などの詳細は作曲者の「科戸の鵲巣」よくある質問を参照。
なお、全曲版ではないものを演奏する際には「コンクール・エディション」と明記することが求められており、「全曲版」「コンクール・エディション」の合成により独自の版を演奏する場合にも「ディレクターズ・カット」など、何らかの方法で「全曲版ではない」ことを明記する必要があるとのこと。また、292~295小節をカットすることは推奨されていない。詳細は作曲者のサイトを参照。

出典:NAPPの作曲ノオト「科戸の鵲巣」よくある質問

交響組曲第5番「NR」より / 天野正道

初演

2003年6月28日
ルネこだいら 大ホール(第6回定期演奏会

指揮

天野正道(自作自演)

合唱

早稲田大学混声合唱団

楽曲解説

この楽曲は、1998年に製作された山田風太郎原作のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)「魔界転生」のオリジナル・サウンドトラックからの一部を大規模吹奏楽編成に再構成した楽曲で、全5楽章から成る。タイトルの“NR”とは、「魔界転生」の海外版“Ninja Resurraction(「忍者復活」の意)”の頭文字から取っている。
作曲者の交響組曲全10作のうち、最も「和」のテイストが突出して楽曲構成されている。また、吹奏楽としては珍しくラテン語の歌詞(Kyrie eleison)による混声四部合唱が付く。
楽器編成は通常の管弦楽編成に沿った編成を踏襲しており、「楽器配列による空間的音響効果の違い」を吹奏楽編成に応用。ソロ木管群(フルート2本、オーボエ2本、クラリネット2本、バスーン2本)を通常パートより切出して雛壇最前列に配置している。

  • 第一楽章 伝説
    乱世の世1637年(寛永14年)島原の乱、モノローグに重厚な大河ドラマ風のメインタイトルが轟く。
  • 第二楽章 救世主
    「主よ、憐れみ給え」と歌う混声四部合唱のKyrie eleison。デウスの巫女、天草四郎時貞の祈りのテーマ。冒頭部分のテーマ(主題)応答は、いわゆる「交誦」である。
  • 第三楽章 黙示録の戦士
    原城に立て籠もるキリシタン軍。そして天守閣より切込む隠密柳生十兵衛光厳。金管群のファンファーレに続き、躍動的なリズムに乗って天草四郎時貞を追い詰める。
  • 第四楽章 堕天使
    炎の中のマリア像が血の涙を流す。天草四郎時貞はデウスの道を絶たれ、魔界へと墜ちていく。四郎の無念をファゴットが悲しく歌う。天草四郎時貞は、デウスの子か、それともサタンか?
  • 第五楽章 転生
    死の淵にある天草四郎時貞が、サタンとなって魔界より降臨する。忍法「魔界転生」である。混声四部合唱と管楽器群が複雑に絡み合い、律動と共に突き進む。クライマックスを迎え、曲想はポップス調となり、ドラムセットが鋭く響く。転生を果たした天草四郎時貞と柳生十兵衛光厳の戦いが再び始まる。